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人を殺した。
己の出生の秘密を知り絶望した哀れな男。
忌み嫌われながらも己を信じ、高みに上り詰めた男。
彼は、救いを求めていた。苦悩の末、彼が選んだ道は、自らの死だった。
死ぬことで彼は救われる。
そして私は、彼の願いを聞き入れた。
アリーナという彼にとって最高の舞台で、死を持って彼を救済した。
あの世で誇れ、自らの高みと、その強靭な肉体を与えてくれた父を。
※詳しくはインペリアルシティのアリーナで受けられるクエスト「Origin of the Gray Prince」をやってみてください。かわいそうな人です…(ノω`)

Brumaの北東、Cyrodiilの果ての極寒の地にその塔はある。
何年も前に破棄されたと思われる無人の塔。
毎日のように吹雪が吹き荒び、凶悪なモンスターもうろつく、立地条件は最悪。
だが場所が場所だけに誰に発見されるでもなく、人と接することを避けて逃れてきた私が見つけたときは、すでに持ち主の姿は無かった。
生活に必要な設備は全て揃っており、内装もさほど荒れてはいなかったため、それ以来勝手に使わせてもらっている。
私にとっては都合のいい住処となった。

アリーナでの肉体的かつ精神的な疲れからか、その日は早めに横になった。
それから幾分か眠ったのだろうか。
夢うつつをさまよっていた時、そいつは現れた。

全身黒尽くめのローブに身を包み、不敵な笑みを浮かべこちらを伺っている。
見た目からろくなやつではないことはすぐに分かった。
だがどうやってこの場所を知った?
「人殺しにしてはとても良く眠るのだな。良いことだ。私が提案する事に対し、お前は無垢な心で聞くといい」
徐々に意識がはっきりしてくる。
これはどうやら夢ではないらしい。
ゆっくりと起き上がり、ローブの中の顔を覗き込む。
…人間。
今のところ敵意は無いようだが、わざわざこんなところまでやってくるとは如何様だろうか。
「…誰」

「私はLucien Lachance、Dark BrotherhoodのSpeakerを務めている。そしてお前は、お前は殺人者だ。命の奪い手。魂を刈り取る者」
Dark Brotherhood・・・名前だけなら聞いたことがある。
Tamriel全土で暗躍する、死の神Sithisを崇拝する暗殺組織だということだが、その実態は私の知るところではない。
「お前の所業、殺人技術に、Night Motherはお喜びになっておられるぞ」
殺人技術、そんなもの私は持ち合わせていない。
それともアリーナでのことを言っているのか。
アリーナは政府容認の殺し合いゲーム。
相手を殺したとて殺人の罪に問われることは無い。
戦う意思の無い人間を一方的に殺めたことは確かではあるが、嬉々して行ったわけではない。
あれは彼を救うという大義名分の上だ。
怪訝な顔つきの私をよそに、男は話を続けた。
「実はある提案を携えてきたのだ。我ら、幾分特殊な家族に加わるための……機会についてな……」

「勧誘にでも来たのか?」
無表情に答える。
Lucien Lachanceと名乗る男は、その笑みを崩さぬままに話を進めた。
「まあ聞くがいい。Green RoadからBravilの北へ向かうところに、Ill Omenという宿がある。そこにRufioという名の男がいるはずだ」
「・・・」
「彼を殺せ。それでDark Brotherhoodへの加入の儀は完了となる。事を終え、次にお前が安全とみなせる場所で眠りにつけば、再びお前の前に姿を現すこととしよう。新たなる家族に対する親愛の態度でな」
「・・・」
やはり、男は私を殺人者として、Dark Brotherhoodに引き入れようとしている。
気に食わない。
その余裕めいた笑みと、すでに事が決まっているかのような口振り。
基より私は殺し屋になるつもりはない。
「私は殺人鬼ではない」
吐き棄てるように言った。
「そうではない、と?しかしNight Motherは違うお考えであるようだが」
「・・・」
Night Mother、先ほどから名前が出てくるが何者なのだろう。
Dark Brotherhoodの幹部の呼称だろうか。
私の疑問を察したかのように、Lucien Lachanceが口を開く。
「我らは不浄なる婦人を礼賛している。彼女の影なる胎内より我らは生まれ、彼女の乳房から悪意と苦痛の乳を授かったのだ。彼女は自らの子を愛す、お前の知るようにな」
不浄なる婦人Night Mother。
簡単に言えばその不浄なる婦人とはDark Brotherhoodの創設者ということだろうか。
そして彼女の子供とはDark Brotherhoodのメンバーであり、その悪意と苦痛を持って死をもたらす。
この男の言葉は比喩が多く分かりにくいが、まともな連中でないことは確かだ。
だが、最後の言葉はどういう意味だ。
私は彼女のことなど知る由もない。
「念のため、お前が考え直したときのためにひとつ贈り物を授けよう。これは血に飢えた無垢なる刃、"blade of woe"だ」
目の前に差し出されたものは、黒い刀身に金色の装飾が施されたナイフ。
「躊躇する必要は無い。見ての通りこれはただのナイフだ。今のところはな」
「・・・」
このナイフを受け取ったら私はどうなるのだろう。
この男には早急にこの場を出て行ってもらいたいが、ナイフを受け取るまでは引く気がなさそうだ。
ナイフを受け取ったとしても、行動を起こさなければ刃は無垢なまま。
そして私も変わらない。
幾秒悩んだ挙句、仕方なくナイフを受け取る。
蝋燭の火で黒光りする刃は、まるで血を欲しているかのように見えた。
blade of woe、悲痛の刃か・・・嫌な名前だ。
「悩むがいい。だが、Night Motherは事の全てを知っておられる。お前は必ず我等に同意することになるだろう」
「・・・」
意味深な言葉を残し、男は部屋の出口へと歩むと、姿を消した。
…なるほど。こんな辺境の地に怪物にも襲われずどうやって無傷で現れたのかと思ったが、奴は透明化の魔法をマスターしている。
誰にも気付かれず、誰にも知られず、そっと忍び寄る。
暗殺の術は心得ているというわけか。
かく言う私も、The Shadowの生まれ、Moon Shadowの力で姿を消すことが出来る。
Night Motherとやらはそこまでお見通しなのか、それともただの偶然か。


「・・・」
私は考えていた。
私に出来ることはなにか。
私の存在理由とは?
孤独に慣れてしまった私は、常に一人で行動してきた。
この世界で私の存在を知るものは皆無に近いだろう。
人に認知されない人間など存在しないのと同じ。
では、私はなんの為に生きている?
悪魔と人間の混血児である私は、これまで人助けとは無縁だった。
だが、アリーナで彼を殺したとき、確かな満足感があった。
それは殺しから来る快楽でも愉悦でもなく、私という人間でも人を救うことが出来るという確かな手応えからだ。
私に出来ること、それは死を持って救うこと。

アサシンギルドは冷酷無比な殺人集団とはいえ、無作為に殺人を犯しているわけではない。
基本的には仕事であり、依頼がいて初めて殺人に及ぶ。
中には、殺しが楽しくて仕方が無い連中もいるだろうが。
ならば、どのような人間がターゲットになるか。
それは少なからず、殺してしまいたいほどの恨みを買うような、哀れで罪深き人間。
依頼人はターゲットを始末することで救われる。
そして・・・
哀れな罪人は、死ぬことでその罪の牢獄から開放される。
罪の十字架から逃れることが出来る。
死ぬことで彼らは救われる。
私に出来ること、それは…
それは死を持って罪人を救うこと。

私はblade of woeを握り締めた。
これより私の善行、"死の救済"が始まる。

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OBLIVION プレイ日記 第1弾 「殺シノ調ベ」 | 2007/07/05(木) 05:52 | コメント:(0)


